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山に暮らす
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安達 健 陶器展

2025.9.20(sat) - 28(sun)
11:00 - 18:00
24(wed)休み 最終日16:00まで
knulpAA gallery(東京都石神井公園)




あの日以来、起きてから眠るまで一日中聴くとはなしに付けてきたラジオ。
この山間に暮らすようになってから、消しおく時間が増した。

起き抜けの台所。小窓を開ければひんやりと澄んだ空気が音を連れて滑り込んでくる。
川水が石の隙間を落ちるせせらぎ。名も知らぬ種々鳥たちのさえずり。木々の葉が擦れ合うさざめき。大小虫らの足音羽音。
上下左右遠近のサラウンド。
そこに朝食の支度をする僕のノイズを乗せても良いものかどうか。本気で惑う。
だから程々に、調和するように、硬い音をなるだけ柔らかく出すように。
考えてみれば僕もこのフィルハーモニーのいち成員。この山の一部。
引いて聴けば、全ては大きな環境音。
そのことの必然と、心地良さを。


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この頃はちょうど、みんな揃っての晩御飯から早々にエスケイプした娘の
気晴らしに勝手口を出ると、薄暮が宵闇に移るその刻で、
真っ黒な木々のシルエットに囲まれた空はどこまでも深いブルーに染まっている。
汗ばんだ娘の重みを片腕に抱えながら、ぼんやり見上げているその横顔を盗み見る。

あなたと、ここでこんなふうに生きているとは思わなかった。

振り返れば、オレンジに灯るその中で、息子と妻が何やら言葉を交わしながら夕べの食事を続けている。
こんなふうで良かったのかもしれない。
そんなありふれた光景にこそ感慨が滲むんだ。


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ここに来ていっそうにその意味が僕の中で昇華されてきている緑灰釉シリーズを
ひと通りと、さらに新たな形状も提案します。
加えて長石釉のシリーズでも、ここだからこそリアリティを持ってご提案できる形を発表予定です。

初日と二日目、20(土)、21(日)は在廊します。
この日は例年通り、盛り付けのデモンストレーションも随時行う予定。
どうぞお喋りしにでも構いませんので、お越しくださいませ。

よろしくお願いします。
# by aji-kyuu | 2025-09-17 23:08 | 案内 | Comments(0)
川に森に
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安達 健 陶器展

2024.9.14(sat) - 22(sun)
11:00 - 18:00
18(wed)休み 最終日16:00まで
knulpAA gallery(東京都石神井公園)




 この春、住み慣れた港町横須賀を離れ、静岡のたゆたう川を辿った先、
山中の納屋付き古屋に拠点を移しました。
杉や檜の植林と、竹やその他たくましい雑木の山を眼前に、
日照りや大雨に都度がらりと様相を変える谷川の音が耳に響く、
そういう環境の中で、何も変わらない自分が何一つ変わらない作業を重ね、
積もり積もって十三度目の石神井個展です。
 ここに来てしばらく。自分の語ってきた、あるいは扱ってきたものの正体が
より明瞭になった気がしています。
土であり、水であり火であり、動植物であり。
それらの間には本来大きな隔たりはなく、ごくごく当たり前のように連関しています。
その一端に僕もしかと結びつけられている。
そんなことを思いながらお届けする器たちです。
ぜひ手にとってお感じください。

今回は緑灰秞の葉形シリーズを一通りお見せできるよう準備しています。
また茶灰秞のプレート類も多く用意できそうです。

在廊は14(土)、15(日)の二日間のみ。
もちろんこの日はいつも通り盛付デモンストレーションもやります。
よろしくお願いします。



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川をさかのぼり、森をくぐりぬけたその先。
拓いた新しい工房は、
かつての蜜柑の選果小屋。
剥き出しの配線から下がる裸電球はそのままに、
収穫コンテナが積まれていたであろう棚には轆轤びきを終えたばかりの素地を並べ
機械類の収まっていた天井高の納屋では窯を焚いている。


ここで長く積み重ねられてきた分厚い時間の上に、
こうしてまた僕が一層ずつ日々を淡々と載せていく。

川のせせらぎに注ぐ一滴。
木々の根元に落ちる一葉。
やがて大河にも森林にもならんというそのかそけき我が生を、
ここにおく。

# by aji-kyuu | 2024-09-05 23:40 | 案内 | Comments(0)
新たな地から
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二人展 安達健(灰〆)フクオカタカヤ(komorebi)

2024.5.23thu - 28tue
12:00 - 19:00 LastDay - 17:00 ←営業時間変更になっています!
うつわ謙心 (東京都渋谷)



毎年重ねて9回目。
うつわ謙心でのフクオカさんとの二人展。

今年の案内状表面はこれまでフクオカさんとの間で取り組んできたコラボ作品。その進化版。
昨年までの共作を結合系とするなら、もう一足踏み込んでみようと挑んだ融合系。

互いが素材(粘土)を交換して、自身の文脈の中に取り込んでみるという試み。

長くお付き合いいただいてきたつもりではありましたが、こうすると思いのほか
素材への向き合い方、技術の位置付け、互いのスタンスの違いが明瞭になった気がします。
良し悪しはともかくとして、この試みの面白さは伝わるはず。

この他にも、アイテム展開を増やしたもの、作り方を大きく変えたもの、
数量はそれぞれ多く用意できそうにないですが、今お見せできるベストなラインナップを並べさせていただきます。

神奈川県の横須賀から、拠点を静岡県藤枝市に移し
お茶とミカン農家の納屋だった場所を改装した工房で作られる、初めての器たち。

在廊は25日土曜のみと限られますが、
僕が最も信頼をおく店主が対応してくださるので、気兼ねすることなくお立ち寄りください。
なお初日は15時までは事前予約制。
それ以降でしたら自由に入店できます。

どうぞよろしくお願いします。


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# by aji-kyuu | 2024-05-02 22:15 | 案内 | Comments(0)
ひとを想う
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安達 健 陶器展

2023.11.11(sat) - 19(sun)
11:00 - 18:00
15(wed)休み 最終日16:00まで
knulpAA gallery(東京都石神井公園)




やしなううつわ

疲労の色濃い夕べ。
けれど週末まではまだまだ遠い。

肉も根菜もごろごろと鋳物鍋に放り込んで、
あとは待つだけ。
敷いていた玉ねぎとバルサミコでのソースを添える。

明日への活力を一つの器上に並べて。
今夜のひと皿。

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もてなすうつわ

やや物足りない冷蔵庫の中。
とはいえ大切にしたい休日の朝。

残しておいたさつま芋の甘みに
マスタードの酸みを効かせて、
豚の旨みでまとめる。

精一杯の思いを一つの器のうちに込めて。
今朝のひと鉢。

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初個展から10年。
毎年積み重ねた石神井での発表。
初めて8つの季節を過ごし、二年ぶりにして季節を変え開催する今回の東京個展となりました。

ブランクとなったこの2年は、仲間内でのうつわ研究のテーマも相まって
これまでの和食器とは軸を異にした、洋食の器を見つめてきました。

洋風和食器とは似て非なるものとした上で、洋食器の思想的、文化的背景に一足踏み込むことにより
広がり、深まるうつわ観。

日本に生まれ、一度も外海へ出ることもなく生きてきた身であれば自然、
和食器観に浸り切って、洋食器の文脈に違和感を覚えそうなものだったけれど
いつもの通りに、いち使い手の立場から翻って見れば、
なんのことはない、主体の在りどころの違い。
「食べる人を想う」という意味では互いに通底していることが訳なく腑に落ちる。

いつの時代どこの土地でも、
食事は生命維持の営みであるとともに、ひととの非言語コミュニケーションの大事な場。
自身の思いを贈り渡すのか、相手の思いを汲み取るのか、
その人が誰で、その人にどうあって欲しいのか、
そこから生まれる食事は、洋の東西まるで関係なく、美味しく楽しい。

そんな風景を夢想して、今回も多様な器を作りました。


洋食器とは?和食器とは?
それらをどう使い、どう遊ぶのか?
私安達が解説提案していきますので、よろしければ在廊日の初日11(土)、12(日)めがけてお越しください。
出品物を用いた盛り付けのデモンストレーションも予定しています。

どうぞよろしくお願いします。
# by aji-kyuu | 2023-11-04 23:28 | 案内 | Comments(0)
季節
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安達健・田中大喜 二人展

2023年 9月16日(土)- 24日(日)
開廊時間 11:00 - 18:00  会期中無休
季の雲(滋賀県長浜市)




まだ岐阜を拠点に活動を始めて間もない頃、
西に振り仰ぐ伊吹山を越えた向こうから、その評判は伝え聞いていた長浜のそのお店。
あれから十余年。
先輩作家さんからのお誘いを受けて、本展が実現しました。

都市部ではなかなか叶わない、開放的で品位ある空間。
喧騒の遠い、ゆったりとした時間に、お茶の香。
瀟洒でありながら、どこか懐かしい季の雲。

お相手田中さんとは、各地のイベントでご一緒したり、勉強会で活動を共にしたり、
けして厚く深く関わってきたわけではないものの
お会いする毎に何か共有できるものがあるような気は、長くしていました。

一見すると、使う素材も仕上がる器のその姿形も全く違っているし
大きくやきもの観という意味でも、ピタリと一致しないのは十分に分かっているのだけれど、
否、だからこそ興味惹かれ、八ヶ岳の麓の工房まで訪ねたりもしてきました。

この度、そんな田中さんと初めて二人展の機会をいただきました。

ありふれた現代の生活空間ですら、モノを極限まで排したり、照明を絞ったり
代わりに古物をひとつ据えることで、美的に研ぎ澄まされた空間へ変容させるようなセンスを持ち合わせる田中さん。
線(フォルム)への意識が人一倍高く厳しいけれど、
軽妙な語り口からは他者への愛も深いことがうかがえる、
緊張と弛緩を自在に操る、さながらコンポーザー。

僕如き若輩が器でどう対峙できるのかな。
ある種の怖さがありつつも、とても楽しみなんです。


季の雲では初出展。
巡る季節のとば口ともなる頃ですので、
秋の食卓、秋のお茶の時間、秋の草花をも意識して、広めのラインナップで臨む予定です。

初日は二人とも在廊。
二日目は僕安達のみ在廊となります。

お近くの方はぜひお立ち寄りください。

# by aji-kyuu | 2023-09-06 22:17 | 案内 | Comments(0)