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僕を作ってきた作家達・1
先日、ある人から“自己紹介代わりに”とでもいうように
「好きな陶芸家は誰ですか?」と尋ねられた。

まだ業界のスタートラインに立ったばかり、ひよっ子もひよっ子なので、
当然よくされる質問‥
のはずだった。

けれど、名前が出てこない。
思い付かない。

あれれれ。

学生の頃は聞かれなくても何人も挙げていたのに。

「んー、特にいません。」
なんだか感じ悪い。
でも正直なんです。

ここ数年、まともに考えてこなかったことに気付く。


いいな、と思う器は数あれど、その作り手が好きとか嫌いとか、
あえてまで同業者としての意識はしてこなかった気がする。
生意気にも。


それでもね、影響を受けてきた、今なお受け続けている作家はたくさんいるのです。
偶然か必然か、同業の人はわずかですが。

といったわけで

そんな素晴らしい作家さん達を少しずつ紹介していきたい、と。
「僕を作ってきた作家達」
第一回。


李禹煥(リ・ウファン)

1970年代の日本美術に一大ムーブメントを起こした「もの」派と呼ばれる制作姿勢の美術家の中において、理論的にも中心的役割を担った作家。
いわゆる「ジャンル」でいうと、絵画から彫刻、インスタレーション、、、
要するに純粋に美術家です。


僕がまだ東京で映画作りを学ぶ学生だった頃、映画以前、作ることそれ自体への疑念でもがき苦しんでいた時に、なにかの拍子で彼の論考に出会った。
『出会いを求めて』という著書の部分だったと思う。

どしん。
そんな衝撃音が聞こえそうなくらい、当時の僕の中の言葉にできない濁りを瞬時に吹き飛ばして、澄み切ったその先を覗かせてくれる論集で、
恥ずかしながら「もの」派すらまともに知らなかった僕は、それからというもの彼を追いかけ、周辺含めた色々を勉強したっけ。

確か2005年、横浜美術館で大きな個展を開催した時なんかは、その力にもうただただ立ち尽くして、ほぼ丸一日李禹煥に費やした。
いまだに人生で最も良かったと思える展示はこの時のもの。

とにかく、口で(言葉で)説明するのは野暮。
そういうものを作り続けている作家。


瀬戸の陶作家で、僕のバックグラウンドをあまり知らないはずの人が
「もの派みたいな‥」
と僕の器を評した時、思い掛けないワードにどきりと。

繋げて意識はしていないつもりだったけれど、そりゃ嗅覚優れていればすぐ分かるか。
そのくらい根底で繋がり得る思想が僕の中にも流れているのです。

李禹煥。
僕を語る上で絶対に外せない一人。




関連して

昨年たまたま関東に滞在中、その「もの」派の記念碑的作品『位相−大地−』(関根伸夫)が多摩で再制作され、展示してあるという記事を新聞に見つけ、勢い込んで出かけたものの、その光景にがっかり。

あれをあんな高台にやっては駄目でしょ。
まったく力失って、縮こまっていた。


地球ってホントでかすぎる!
by aji-kyuu | 2009-01-18 18:03 | 観る | Comments(0)
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