新年、明けましておめでとうございます。 ご報告が少々遅くなってしまいましたが、 実は僕安達健は昨年末にやや無理を押したスケジュールで引っ越ししまして、 現在神奈川県は横浜市に暮らしております。 およそ8年に渡って、文字通り我が身を支え、育んでくれた岐阜県本巣市からの拠点移動です。 現段階ではまだ工房の住所が確定しておりませんので、 そのお知らせは改めてさせていただくとして、 今日は新年と新天地での再スタートに当たっての所感といいますか ここひと月ほどつらつら感じ考えてきたことを、この機に記しておきます。 きっといつかはすることになるだろう と幾分のんびり構えていた横浜への移転が、急展開してこのタイミングとなったのはおよそ一年前。 今回の主たる理由は家庭の事情によるところが大きいのですが 環境の転換それ自体は実のところ来るべくして来たというのが感触としてあるのも正直なところ。 潮目というと語弊もあるかもしれませんが、決めた当初から「今がその”よい”機会なのかもしれない」と思っていたのも事実。 断腸の思いで、とか、苦肉の選択で、ということは実感として一切ありませんでした。 それもついひと月くらい前までは。 岐阜から横浜というと実際距離にして400km近くあるわけですが 現代の都市間にしたら大したものでもないし 住む場所がどこであろうとも僕は変わらない、やることも変わらない、 とまあ、自負心ゆえか案外に気楽に構えていました。 けれど実際に引っ越しが迫るにつれ、離れがたい気持ちが日毎増していくのです。 挨拶で回る人たちからの言葉や表情、態度。 そういった表面から漏れる胸中。 そのいちいちにこちらの感情も引っ張られ、 そうこうしていると、その人であったりその場所であったりにかつての自分が移り残っているようにも思えてきて、 そのことが僕の心持ちをじわりじわり重くさせていくのです。 まったくネガティブな意識は持ち合わせていなかったし、 むしろ新たな挑戦ともなろう先には、か細いながらも明るい光を感じていたはずなのに なんだろうこの心身の重さは。 我ながらそんな体に陥った自分に驚き、引っ越しの準備にも幾らか足踏みしてしまった数日がありました。 正直初めから深い縁のあった人や場は少なかったろうし、 たまたま、偶然そこに居合わせた、出くわした、言わばそんなくらいの関係だったはずなのに、 本人知らず知らずのうちに、根は伸び絡みしていたようで その根は以外と太く深く茂っていたのです。 今回そのことの不思議と、尊さをまざまざと思い知らされました。 住んでいた家の片付けで出たあれやこれやの道具、生活ごみなどあまりに多量だったっため やむを得ず庭先で数日間毎夜大きな焚火をして燃やしていたのですが、 幸いにもその幾晩は月がきれいで、番をしながら缶ビールをちびりちびりしていました。 空気は冬らしく冷たかったけれど、 側に寄ると手が届かない距離でも熱いくらいで、足しにしていた薪の香もいい肴になるし、 何より、盛んに燃える炎の揺らぎや時折はぜる音韻が心地良く、 その”やきもの”に魅入っているうちに、ぐるぐる複雑にこんがらがっていた心が解きほぐされていくようで 僕は火に本当に助けられたのでした。 今思えば、あの焚火は僕にとって必要だった儀式で、あれはまさに送り火だったのだと得心するのだけれど、 それを扱う業にありながら恥ずかしいことですが、火がことこれほどの力を有していることを僕は解っていませんでした。 そんなこんなで自分の見積もりの甘さも祟って、方々へご迷惑をお掛けすることとなり、 なおかつ多大に助力いただくことで、ようやっと移転が完了しました。 今現在はもっぱら荷解きや各所の片付け、環境作りに日々精を出していまして、 春にはこれまで通りの陶器作りを本格化させていく算段をしております。 岐阜や愛知で得た沢山の経験や繋がりを財産として、 それを基に、またこの地でも変わらぬ信念とスタンスでもって 作家としてはもとより、まず人として自在に柔軟に渡っていきたいと考えています。 ひとまずはこれまでをじっくり見直し、これからをどのようにも見据えることができる今の貴重な時間を存分に味わいつつ、 また時と共に一段一段積み上げてまいりたいと思っておりますので、 これからも引き続き良きお付き合いを、どうぞよろしくお願いいたします。 以上いつにも増して長くはなりましたが 年始のご挨拶と替えさせていただきます。 皆様にも幸多き一年をお祈りします。 * 引越しに伴い、メールアドレスを変更しています。以下よろしくお願いします。 ajikyuu⚫︎gmail.com (⚫︎は@に変えてお送りください。)
by aji-kyuu
| 2016-01-10 00:26
| 考える
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Comments(2)
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田中隆央
at 2016-01-12 18:37
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ご無沙汰です。引っ越しお疲れさまでした。
横浜とは意外でしたがきっといろいろあるのでしょうね。工房も無事見つかりますように。 僕も田舎とはいえ普通の住宅街、どこであれと思いながらやってます。 ではまた、再会の日まで!
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aji-kyuu at 2016-01-13 21:28
田中隆央 様
田中さんと初めてお会いした時には、数年後にこんな所にいることになるとは思いもしませんでした。 でもお互いさして変わっていないんでしょうね。 考えていることも、やっていることも。 「動く」って「風景が移ろっていく」ことなのかもしれませんね。 それ以上でも以下でもなくて。 当たり前と言えば当たり前のことか。
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