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和食器の哲学
秋の行楽シーズン。
観光地に限らずそこかしこで、様々なイベントが催されていますが
こちらでも、展示会シーズン。

連日のお知らせになります。
今回はまた少し趣向を異にする展示会です。


かれこれ五年前の2013年、愛知県瀬戸市を拠点に立ち上げられた「うつわ」の研究会があります。

新道工房・宮本茂利を代表とし、陶磁器作家を中心に木漆、ガラスの作家も参画。
年齢、キャリア、活動地もそれぞれの者がひとところに集い、
「うつわの基本の『き』を改めて探る」ことを主眼に会合を重ねています。

僕安達も当初から参加。

時期により濃淡はあるものの、
ふた月に一度ほど、専門家のレクチャーや、資料収集と整理、作家間のディスカッション、料理屋での実使用体験会などなど
その折々にテーマを設定して、集まれる者で取り組んでいます。

その基が旗揚げ時から主だったテーマとして据えていたのが「懐石の器」、中でも「向付」です。

昨今の家庭での食事は、外食産業の影響や、食住の相対的軽視による過度な効率化によって大きく変容しています。
その中で脇に追いやられ、風前の灯となりつつあるのが和食”文化”。
世界遺産登録されるくらいに、しいて守るべき希少な対象となっています。

ひとことで和食文化といってもその表れは種々方々。
歴史的な積み重ねによって血肉化、身体化しているがゆえに
じゃあ、なにがどう?と訊ねられるとぼんやりしていて語りにくい。

それは、和食文化を下支えしているはずの我々うつわの作家にとっても同様でした。
おぼろげに、けれど確かなる危機感を覚えつつも、どうにも手に負えない大いなる課題。

その折、ひとつの方法論として「思想哲学はフォーマルな場において極まり、先鋭化する」との新道工房・宮本氏の持論でもって
日本の最もフォーマルな食事「懐石料理」を見直し、掘り進め、ひいては和食文化を掴み、言語化していこう
そうした蠢きが瀬戸で起こり、その試みが基(もとい)となり、主要テーマ「向付」を設定するに到ったわけです。


以降約五年、
いろいろなアングルから迫ってきた和食器のエース「向付」にギュッと焦点を絞った展示会を開催します。



和食器の哲学_b0156116_06115896.jpeg


初冬の向付 展 〜うつわ勉強会基(もとい)

2018.11/14wed-19mon (会期中無休)
12:00-19:00 (最終日17:00まで)
うつわshizen (東京都渋谷区)

安達健、片瀬和宏、新道工房、竹下努、中西申幸、橋村大作、松永真哉
賛助出品:名古路英介




懐石、向付と聞くと、高尚だとか、敷居が高いという印象を持つ方も多いかとは思います。
もちろん、今回は向付展ということなのでおそらく出品物の八割がたは「特殊」な器。
いつもどこでもだれにでも、という汎用性よりは専用性の強いものが多いでしょう。
用途幅が狭いゆえに、家庭では使いにくい。
ただ、そんな特殊な器に込められているのは、言わば普遍的な人の心。
誰もが当たり前に持つ、人を、自然を、そのひと時を想う心。
難しい理屈などではありません。

そういった柔らかな心は、食卓という現場にややもすると冷たい理ではなく、きっと温かな情をもたらしてくれるはずです。


八名が八様に表す心をぜひご堪能ください。

なお本展はその性質柄、出展作家の解説を聞きつつご覧いただくのがお勧めです。
在廊予定は以下。

14(水) 安達、橋村
17(土) 竹下、中西
18(日) 安達、宮本

よろしくお願いします。


この会期に先立ちまして、先月よりうつわ勉強会基の名義でInstagramも始めました。
motoi.utsuwa

合わせてお願いいたします。



和食器の哲学_b0156116_23345245.jpeg
      しらすと蕪の奈良漬和え
和食器の哲学_b0156116_23350828.jpeg
      かぼちゃと茸の醤油煮
by aji-kyuu | 2018-11-08 23:40 | 案内 | Comments(0)
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